3Dプリンター(2)2015年10月12日

3Dプリンター制作を目指して(2)

「3Dプリントされた取り付け小物は注意が必要なようです。」自分で3Dプリントしてわかったことですが、フィラメントと呼ばれる太さ1.75mmの樹脂を熱で溶かし、0.4mm程度のノズルから細く樹脂を絞り出し、それを幾層にも積み上げてプリントします。プラスチックの塊ではないので作成物は強度に問題が出るようです。最初のプリントは3Dプリンターの取り付け小物類のスペアをプリントしました。2台目を作成するつもりでパーツを作成しました。
ついでに5.5mm厚のMDF板でフレームも作成したので本当に2台目になってしまいました。プラスチック以外のパーツも揃えました。
殆どのパーツは日本国内の通販やホームセンターで購入が可能です。中には時間がかかっても海外から購入したほうがお得なパーツもあります。RepRap Prusa i3のパーツ類を整理しておきましょう。

  • フレーム
      MDF板、アクリル板、アルミ板などを使用して自分で作成し、Y軸のボルトに取り付けます。それだけでは強度に問題があるので前後、あるいはどちらかから支えをする必要があります。このフレームにZ軸モーターと駆動系を取り付け、その上にX軸キャリアー部分がのります。
  • X軸可動部分
      ホットエンドと呼ばれる印刷ノズル部分を左右に移動させるステッピングモーターとリニアロッドで構成されます。モーターエンドとアイドラーエンドと呼ばれる3Dプリントしたプラスッチックパーツをリニアロッドで結合し、その間をホットエンドの取り付けられているキャリアが移動します。キャリアの移動はベルトとプーリーで行います。
  • Y軸可動部分
      印刷物を置くベッドを前後に移動させるステッピングモーターとリニアロッドで構成されます。ベッドの移動はベルトとプーリーで行います。Y軸のフレームは6本のM8寸切りボルトと3Dプリントしたコーナーパーツで作成されています。その他にモーター支持パーツとアイドラー、タイミングベルトホルダーを3Dプリントします。
  • Z軸可動部分
      X軸キャリアーを上下に移動させるステッピングモーターとリニアロッドで構成されます。フレームに取り付けます。X軸キャリアーの移動はステッピングモーターに直結させたM5の寸切りボルトを使用します。M5ボルトを使用した場合、ネジピッチは0.8mmになります。
  • 3Dプリントパーツの作成
      MakerBot ThingiverseYouMagine: shareなどのサイトでPrusa i3パーツファイルを入手して印刷してください。オリジナルデザインとは異なるものもありますので自由に選択してください。フレーム取り付け用のプラスチックパーツもフレーム素材に合わせて選択し、印刷してください。
2台目を作成するのであれば必要になります。
  • リニアロッドと寸切りボルトの入手
    XYZ軸共通に使用する太さ8mmのリニアロッドはYSK社製のYSAA形スタンダードリニアシャフトを使用しました。素材はSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)で高周波焼入処理を施したシャフト長400mmの定尺物です。モノタロウから購入しました。
    M8寸切りボルトはホームセンターで扱っているステンレス鋼のシャフト長285mm定尺物を4本、M5寸切りボルトは同じく定尺物を2本使用しました。Y軸フレームの前後方向に使用する450mmの寸切りボルトはちょうどよい定尺物がありませんので1mものを切断して使用します。ホームセンターなら切ってくれるところもあります。M5の寸切りボルトは扱っているところが少ないです。M6寸切りボルトならどこでも扱っていますのでM6に変更することも可能です。M6寸切りボルトを使用した場合、ネジピッチは1mmになります。
  • リニアベアリング、ベルトとプーリーの入手
      リニアベアリングはリニアロッドに合わせて内径8mmのものを使用します。ベアリングのみのLM8UUを7個と取り付けブッシュ付きのSC8UU(取り付け穴4個)または、SCV8UU(取り付け穴2個)をベッド用に3個使用します。3Dプリントしたベアリングブッシュを使用する場合はLM8UUを3個使用します。
    ベルトはベルト幅が6mmのGT2 タイミングベルトで長さ2m程度でX、Y軸の駆動に使用します。プーリーはGT2 20歯 幅6mm 内径5mmのものを使用します。アイドラーにはフランジ付きのミニチュアベアリングMF105ZZを2個一組で合計4個使用します。調整機能付きのアイドラーに変更した場合は指定するベアリングに変更します。
    Z軸のM5寸切りボルトとステッピングモーターを直結するカップラーが2個必要です。3Dプリントしてもよいですし、フレキシブルシャフトカプラ 5 x 5mmを使用しても構いません。
    この辺りはe-bayなどで中国のバイヤーから購入すると安価(国内の約半値、送料込で)に入手できます。
  • ステッピングモーターと制御マイコンの入手
      ステッピングモーターはNEMA17を使用します。シャフトは外径5mm x シャフト長24mmのものを選択してください。XY軸に1個づつ、Z軸に2個使用します。エクストルーダーに使用しているステッピングモーターも同じものです。
    制御マイコンは3Dプリンター制作を目指して(1)で紹介しているArduino Mega2560を使用します。中国製のCH340Gを使用している互換ボードを選択する場合はPCに専用ドライバーのインストールが必要です。ステッピングモータードライバーICはA4988のほうが安くあがります。
  • ホットエンドとエクストルーダーの入手
      3Dプリンターの中心になる部分です。オリジナルのPrusa i3では3Dプリントしたパーツで作成したエクストルーダーとホットエンドの組み合わせですが、市販品のキットではMK8エクストルーダーがよく使用されています。1台目の3DプリンターはMK8エクストルーダーを使用しましたが、今は3DプリントしたダイレクトエクストルーダーとメタルJ-Headホットエンドの組み合わせに交換しています。
    ホットエンドのヒーター電圧は注意してください。12Vと24V用があり選択には自分の使用する電源に依存するためです。PC用のATX電源やほとんどの専用電源は12Vですので12Vヒーターを選択します。
  • ヒーテッドベッドと電源
      ABSフィラメントで印刷したいとか、印刷物が剥がれやすいなどを防止するためにヒーテッドベッドを使用しますのでPLAフィラメントでは必ずしも必要なものではありません。MK3ヒーテッドベッドなら12V、24Vどちらの電圧でも使用できます。ABS用に100度まで加熱するには12Vでは時間がかかりますので24Vでの使用をおすすめします。24Vでも大きな電流を流しますので太い配線を使用してください。
    電源は市販されている12V電源または、PC用の350W程度のATX電源を使用します。ATX電源の場合は12Vのみ使用し、5Vは使用しません。MK3ヒーテッドベッドへの電源供給までするのであれば大きめの電源を選択してください。

3Dプリンター(3)2015年10月12日

エクストルーダーとホットエンド

エクストルーダーとホットエンドは3Dプリンターの中心になる部分です。3Dプリントの原料となるフィラメントをホットエンドに送り出す役割がエクストルーダーです。そのフィラメントをヒーターで溶かしてノズルから押し出すのがホットエンドです。押し出す圧力(量)はエクストルーダーから送られるフィラメントの圧力になります。RapRep Prusa i3オリジナルでは3Dプリントしたパーツで作成したエクストルーダーとJ-Headと呼ばれるホットエンドの組み合わせです。市販されている3DプリンターキットではMK8エクストルーダーがよく使用されています。
両者に違いはフィラメントの送りギアーとステッピングモーターとの間に変速ギアーを入れているかどうかです。MK8エクストルーダーはステッピングモーターのシャフトにフィラメントの送りギアーが取り付けられているダイレクトドライブ方式です。ステッピングモーターのトルクが要求される反面、構造がシンプルで作成が容易で小型化が可能です。MK8エクストルーダーはホットエンドと一緒にX軸のキャリアにのせることが可能です。
また、デルタ型の3Dプリンターではキャリアが宙吊り状態なので重量的にホットエンドとエクストルーダーを分離してキャリアにはホットエンドのみをのせ、フレーム上にエクストルーダーを固定する方法が取られます。Bowdenエクストルーダーです。エクストルーダーとホットエンド間はPTFEテフロンチューブで結合し、その中をフィラメントが通ります。エクストルーダーの押し出す力をしっかりとホットエンドに伝えるためにPTFEテフロンチューブ両端をしっかりと固定する必要があります。M4ナットで固定してもよいのですがハーフユニオンを使用すると脱着が可能になります。このBowdenエクストルーダーとホットエンドの組み合わせはPrusa i3でもキャリアにのせる質量が少なくなるので有効な方法です。
3Dプリントで作成したBowdenエクストルーダー

  • AirTripper's Extruder




  • 小型エクストルーダー Mini NEMA17 Extruder




  • 変わったエクストルーダー Saintflint Extruder





今回新しく購入したE3D V6タイプのホットエンドです。ホットエンドは3個のパーツとヒーター、冷却用のヒートシンクとファン、温度計測用のサーミスターで構成されています。エクストルーダーとホットエンドの一体型MK8エクストルーダーでも構成部品は同じです。
M6 x 26mmまたは30mm、内径2mmのバレルとヒートブロック、ノズルが構成部品です。ヒートブロックにノズル、ヒーターとサーミスターを取り付け、M6バレルにヒートブロックとヒートシンクを取り付けます。ヒートシンクの形状でいろいろなタイプがあります。ヒートブロックはABSフィラメント使用で230度以上に加熱します。その熱をバレルの上まで伝えてしまうとノズル詰まりを起こしてしまいますのでバレル上部の冷却は重要です。E3D V6タイプのホットエンドはバレルにヒートシンクが装着され、ファンで強制冷却すれば効率的にホットエンド上部が冷却できます。E3D V6タイプのホットエンドはバレルにヒートシンクが装着され、ファンで強制冷却すれば効率的にホットエンド上部が冷却できます。ファンは30mm角のファン程度十分に冷却できます。この辺りのパーツは国内でも入手できますが高いです。e-bayで中国から直接購入するほうが安価に入手できます。参考にリンクを張ってあります。
ホットエンドで冷却不足を起こすとホットエンド上部やエクストルーダーでフィラメントが柔らかくなり、フィラメント送りに障害が出てしまいます。

  • MK8の詳細な組み立て方です。
  • Bowden方式でよく使用するE3D V6ホットエンドの詳細な解説はGE techのサイトを参照してください。

  • Slim Bowden E3D v5 mount for Prusa i3
    マウントしているのはE3D V6 ホットエンドですがサイズは同じです。PLA樹脂よりも熱に強いABS樹脂で作成しました。30mm角DC12Vファン使用。

3Dプリンター(4)2015年10月25日

フィラメント

熱溶解積層法の3Dプリンターで印刷できる素材はフィラメントと呼ばれる太さ1.75mmまたは、3mmの棒状(ヒモ状)に加工したものを使用します。大別して植物由来のPLAと石油系のABSです。基本形はここまでで色は様々、クリアもありますが熱で溶かして印刷するので色がにごり綺麗なクリアには仕上がりません。また木、金属などを混ぜたフィラメントも出ています。値段も様々で1Kgあたり2000円から数万円もするフィラメントまであります。今使用している国内で最安値と思われるPLAフィラメントです。色は結構たくさんあります。フィラメントが原因のノズル詰まりはありません。
ABSフィラメントも使用しています。PLA素材からABS素材にフィラメント交換をする場合はホットエンドの温度を230度まで上げてそのまま交換すればよいのですが、反対にABS素材からPLA素材にフィラメントを交換する場合は注意が必要です。ホットエンドの温度は230度のままフィラメントを交換し、ホットエンドからABS素材が十分排出されてからホットエンドの温度を180度に下げます。ABS素材は180度では固まってしまいノズル詰まりを起こしてしまいます。
最初に使用するのはPLAフィラメントをおすすめします。ホットエンドの温度が低く、ヒートベッドなしても印刷できます。ABS素材をうまく印刷するにはヒートベッドでベッドの温度を100度以上に保つ必要があります。そうしないとベッドから印刷物が剥がれたり、反ったりしてしまいます。印刷物の冷却も行いません。印刷後はベッドの温度が室温になるまで待ちます。
ABS素材をきれいに印刷するための改造
ヒートベッドを設置します。RAMPS1.4コントロールボードを使用しているのであればヒートベッド用に12V端子が用意されています。MK2B(赤)でもMK3(黒)、どちらもデュアル電源仕様です。違いはヒーターのみか、3mm厚のアルミ板付きかです。ヒートベッドは12/24Vで使用できますので24Vのほうが温めのための時間が短縮できます。24Vでも4~5Aと大電流が流れますので配線は自動車の大型フォグランプ用の配線(SQ2.0あたり)を使用してください。
また、ヒートベッドの温度管理が重要ですのでヒートベッド周りを改造します。ヒートベッドの温度も100度と高いため温めに時間がかかります。ABS素材の場合、ヒートベッドの温度変化を嫌いますので保温材を底面に敷く、プリンター自体をケースで覆うなどの対策を行います。ケースと言ってもダンボール等で作成する簡易なもので十分でしょう。ヒーター底面に入れる保温材ですが、温度が100度以上ということは建材用の保温材ではちょっと不安です。そこで自動車やバイクのマフラー補修用の消音、断熱材を使用します。オートバックスで2000円位します(モノタロウならもう少し安いかな)がこれですと800度の熱にも耐えられるので安心して使用できます。これは効果的です。ヒートベッドの温度が安定してABS素材の出来上がりが綺麗になります。(特に底面の仕上がりが良いです)